会社がない!

目が覚めたら、会社がなくなっていた。その世界は、幸せか不幸せか?

ついに問う

「なに怒っているのよ」ヒートアップする私と随分落差のある少しだけ尖った口調で妻は返した。「4時間労働で何が問題あるっていうの?」

 

「問題大ありだろ!」私の声のボリュームは、抑えきれずあがる。平然と答える妻の態度がふてぶてしく感じられたからだ。「女子供がその程度の労働時間で得られる収入で、家計を賄えるわけがない」

 

「なんでよ」

妻は口をがらせる。

 

「だってそうだろ、4時間労働だぞ」

妻の尖った口先に、私は人差し指を触れんばかりに突き立てる。

 

「ええ、そうよ」

 

「ええ、そうよ、だと…」あまりの怒りで、足先から脳天へと震えが駆けあがってきた。「オマエ、そうとうキツイ仕事しているんだな」

 

「そんなことないわよ」妻は私の人差し指を払い除けて笑顔で答えた。「というか、むしろ楽しい」

 

「楽しい、だと…」私は人差し指を妻の顔面に激しく戻して、あらん限りの声をあげた。「お前ら、女を武器にした仕事をしているのか!」

 

「何よそれ、どういうこと!」

妻は私の怒りと同調した大声を返した。

 

「そんなことしているわけないじゃない! ひどいわ」 

長女も激しく刺激されたらしく、妻の背後に隠れた体を前面に押し出して、耳をつんざくくらいに絶叫した。

 

「そ、そうか…」

彼女らの剣幕に圧倒され、私は怯んだ細い声で頷く。

 

どうやら、ふたりはいかがわしい仕事をしていないようだ。

ほっとすると同時に、特別な能力がない彼女らが、そのような短時間労働で高収入が得られる仕事の謎がますます深まった。

 

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