「や、やりたい仕事って、お、おまえまさか…」
一文字発する度に水分が失われていくように、私の口内は急速に乾いていく。
「まさかって、なに?」
長女は上唇を、再びアヒルのようにめくりあげる。
「そ、それは、つ、つまり、な、なんだ…」
娘の前で私の想像するいかがわしい職業の名称は言えず、私の干からびた喉から次の言葉が出ない。
「な、なに、どうしたの?」
私の動揺が伝染したかのように、長女も動揺した声をあげる。
「だ、だから…」
砂漠でオアシスを見つけられない人のごとく、私は回答に困り、かすれた声で言葉をつまらす。
「ち、ちょっと、お父さん、やばいんじゃない」
長女は、彼女の隣にいる妻の腕を揺さぶりながら言う。
「そ、そうね」妻は動揺した手つきで、パンツのポケットからスマートフォンを取り出す。「き、救急車呼ぶわ」
「ば、馬鹿、そ、そんなの呼ぶな!」
金縛りを振り払うように必死にもがいた末、ようやく私の喉から吹っ切れたような明瞭で大きな声がでた。
「大丈夫なの、あなた?」
妻はスマートフォンを操作する手をとめた。
「決まっているだろ」
「本当?」妻は私を凝視して訊く。「じゃぁ、どうしたっていうの?」
「どうしたって、そ、それは…」
「なに?」
容赦なく、妻は畳みかける。
「だ、だから、そ、それは真面目な仕事なんだろうな」
適切な言葉が見つからないまま、私は言葉を返した。