会社がない!

目が覚めたら、会社がなくなっていた。その世界は、幸せか不幸せか?

仕事が楽しい?

「いや、オレがこんな感じで働けなくなったから、お前らに迷惑をかけているなって…」

家族に対する申し訳なさと、自分に対する情けなさで胸がいっぱいになり、私の声はつまる。

といっても、働く場を失ったのは、自分のせいではないが…。

 

「だから、何が迷惑だか、わからないし…」

妻は戸惑った表情を崩さず、首を傾げる。

私に心配をかけないように強がりを言っているのかと思ったが、違うのか…。

 

「ひょっとして…」

長女が妻の腕を肘で突く。

 

「何よ」

妻は傾げた顔を長女に向ける。

 

「私らが働いて、自分が働かないことに罪悪感をもっているのかも…」

長女は妻に耳打ちをする(だからそう言っているし、声を大して低めないので、筒抜けだが)。

 

「えっ、そうなの!」

妻は驚きの声をあげる。

 

妻はなぜ、そんなことも飲み込めないのか…。

私は返す言葉も見つからず、頷くしかなかった。

 

「罪悪感なんてもつ必要ないじゃない」

妻は曇りのない笑みを浮かべた。

 

「いや、でも、お前らに負担をかけてしまうし…」

その笑顔(恋人だった頃の女神のような笑顔ではないが)を見て、私は目頭が熱くなる。

私に心配をかけまいと、妻が精一杯の演技を続けているように思われたからだ。

 

「負担って、何が?」

妻は、また首を傾げる。

 

「だから、仕事だよ」

 

「仕事が負担?」妻は呆気にとられた表情を浮かべてから、笑い飛ばすように言った。「仕事が負担なわけないじゃないの。全然大変じゃないし、むしろ楽しいわよ」

 

前へ

次へ

あらすじを読む

最初から読む