会社がない!

目が覚めたら、会社がなくなっていた。その世界は、幸せか不幸せか?

傷の記憶

夢も見ない深い眠りから覚めると、枕元に置かれた時計の針は午後3時22分を指していた。

妻からもらった睡眠薬が効いたようだ。

 

3時間の熟睡で、心身の疲れはだいぶとれた。

しかし今朝からの出来事を思うと、心にばっと暗雲が覆う。

 

すべてが夢であってくれればいいのに…と、白い天井を見ながら思う。

 

無駄だとわかっていながら、右頬を強くつねってみる。

やはり、激痛が厳しい現実をつきつけてくれた。

 

それでは、昨日まで私がいた世界は夢だったのか?

 

夢だとしたら、あまりにも長すぎるし、記憶も鮮明すぎる…。

 

それに…と思い、私は右の小指の切り傷をみる。

この傷は、おととい仕事でカッターを使い、うっかりやってしまったものだ。

 

私は救われた思いがして、更なる救いを求めるためにベッドから起き、小机に置かれた通勤カバンのなかを見る。

 

が…、無情にも私の期待を裏切り、通勤カバンのなかには、私が持ち帰ったと記憶する会社の書類は一切なかった。

 

「そ、そんな…」

私はひとつひとつ記憶にあるカバンの傷を見つめながら、失望の声をあげた。

 

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