会社がない!

目が覚めたら、会社がなくなっていた。その世界は、幸せか不幸せか?

賄賂はごめん

妻の声がすると間をおくことなく、弟の脳天気な笑い声が近づいてくる。

 

いくら兄弟でも遠慮というものがないのか。

無礼なヤツだ。

私は顔を険しくして弟の到着を待つ。

 

じきに弟の四角い顔が現れた(この顔立ちも、寅さんというあだ名がついた所以だ)。

 

「よう、アニキ元気!」

私の顔を見ると、弟は満面の笑みで手をあげた。

 

「元気なわけないだろ」私は不機嫌に答える。「ていうか、オマエの顔を見たら、余計に具合悪くなった」

 

「そんなことを言うなよ」弟は手みあげを持ち上げてみせた。「アニキの好物の揚げ饅頭買ってきたんだからさぁ」

 

「いらないよ、そんなもん。見ただけで胸焼けがする」

私は大げさに苦い顔をして、胸をさすってみせた。

 

確かに揚げ饅頭は私の好物だ。

しかし弟が土産をもってくるときは、金の無心が裏にあるのが常だ。

 

それに私は食欲がわかなくって昼飯さえ断ったのだ。

そんな脂っこいもの、食べられる訳がない。

 

「そんなに具合がわるいのか?」

 

「悪いよ。だから今日は面会謝絶!」

私は素っ気なく答えると、寝室のドアノブに手をかけた。

 

「じゃぁ、元気になったら、食ってくれ。姉さんに預けとくから」

弟はそう言うと、踵を返す。

 

「そんなもんもらっても、金はやれんぞ」私は弟の背中にむかって言葉を投げつけた。「オレは無職になったんだから」

 

「無職!?」

振り向いた弟の四角い顔についた小さな目が見開く。

 

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