会社がない!

目が覚めたら、会社がなくなっていた。その世界は、幸せか不幸せか?

認めたくない負け

 

「なに、いつまで眺めているのよ」

呆然と、妻の書いた字を見つめていると、心配げに問いかける妻の声が聞こえてきた。

 

「えっ、おお…」

我に返った私は、妻に対して行ったテストの結果を答えなければならないと思って焦る。

 

妻の書いたバラの漢字が合っているかどうかは、スマホで調べればすぐに分かる。

だが、そんな恥ずかしい行為を、妻の前でするわけにはいかない(出題者が正解を知らないだなんて、間抜けにも程があるからだ)。

 

おそらく、妻の答えは間違っていないだろう。

ディテールは定かではないが、確かにこんなような字だった。

 

 加えて、答えられて当然といわんばかりの妻の自信に満ちた様子が、正解を認めざるをえない圧力を私に与えた。

 

しかし容易に、首を縦にふることはできなかった。

自分が妻より劣ることを認めることは、おかしいのが自分であることを受け入れることになるからだ。

 

妻の問いかけにどう答えてよいのかわからぬまま、また時間が過ぎていく。

 

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