会社がない!

目が覚めたら、会社がなくなっていた。その世界は、幸せか不幸せか?

砕け散る自信

「はい、これでいい?」

妻は迷いもなく、私が求めたバラという字を書きあげると、それを私に見せた。

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「ハハハ、何だよその字、チルじゃないか」

妻が予想とかけ離れすぎた字を書いたので、私はふきだしてしまった。

 

やっぱり、おかしいのは妻のほうだったんだ…。

自分の頭が正常であったことに安堵したが、妻の頭が狂っている可能性が強まったことを思うと、笑いは一気に冷めた。

 

「なに言っているのよ。この字、バラとも読むのよ。散るってことは、バラバラになるってことでしょ」妻は心配そうな目で私を見る。「もしかして知らなかった?」

 

えっ、そうなの…。

回復したばかりの自信が、再び砕け散る。

 

 しかし、この家の主として、プライドの崩落だけは食い止めなければならぬ。

「し、知ってたさ」とっさに見栄が口から飛びでてしまった。「でも、オレが書いてほしかったバラとは違う字をオマエが書いたから、おかしくなってしまったんだよ」

 

「本当?」疑わしげにジロジロと私を見る妻。「じゃあ、アナタが書いてほしかった字って何?」

 

「アレだよ!」

私は動揺を振り払うような勢いで、棚の上の鉢植えのバラを指差した。

 

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